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中学三年生になって休む事が少なくなってきた長男に、私はようやく落ち着いてきたのかとホッとしていた。
そんなある日、突然長男と同じクラスの子のお母さんからメールが来た。
その子は同じ部活の大人しい男の子で、三年生になって同じクラスになった事で
仲良くなったようだ。
どこかでお茶しませんか?
そのお母さんが言ってきた。
私は長男の事でゴタゴタしていてママ友を作る機会も無かったため純粋に嬉しいと思った。
待ち合わせのカフェに行った時、そのお母さんの顔を見た瞬間、これは私が期待していたような甘いお茶にはならないと悟ってしまった。
予感は的中した。
そのお母さんが言うには、長男がその子にしつこく接していて困っているという話しだった。
帰りの方向がたまたま同じ方角で、よくウチのマンションの下で立ち話をしているのを見かけていて私としては友達が出来たのねと嬉しく思っていたのだが、実は真っ直ぐ帰りたいその子を引き留めて長時間一方的にウチの子の話しを聞かされている事や、席が前後ろで後ろからウチの子が授業中話しかけてきて振り向かないと座席を蹴ったりすることにストレスを感じでいるのだと話された。
お腹が痛いと学校を休むようになって、それが1週間続いて病院にも連れて行った。
検査は異常が無く、それでも休みたいと言っているその子にお母さんが理由を詰め寄るとそれを話してくれたのだということだった。
私は手先が冷たくなるのを感じながら黙って話しを聞いていた。
修学旅行にも行きたくないと言っているという話しだった。
ウチの子と同じ班だから、と。
更に、休んでいる間ほぼ毎日、その子の家に行き外から大声で学校へ出てくるように声をかけているということだった。
ご近所の目もあるので…と遠慮がちに言われた。
本当に申し訳ありません。と頭を下げる私に、少しの間、自分の子の気持ちが落ち着くまで近づかないように話してくれないかとそのお母さんが言った。
私の意見は聞かないだろうけど、父親から話してもらう事を約束して分かれた。
長男に話しを聞こうとしたが、うっせえクソババァと一瞥して終わった。
あの人に事情を話し相手のご家族や子供さんが困っている事を伝えて、長男に暫く近寄らないように話して欲しいと頼んだ。
だけど、私の予想通り相変わらず真剣に向き合ってくれる事は無く、いつものように五分程度自室に呼んで終わりだった。
当然、長男が変わる事は無かった。