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A君のお母さんは長男を説得しようとしたがあまりに聞き入れない為、すっかり長男を受け入れなくなっていった。
当たり前だが長男がA君の周りにいる事自体を嫌がった。
そして長男もA君のお母さんに敵意を向けるようになっていったようだ。
ある時A君の帰宅を自宅前で待っていたお母さんと、長男が自宅前で鉢合わせになりA君を挟んでお母さんと取り合いになったらしい。
それに対して長男がお母さんの肩を押したことで、お母さんの肩が脱臼したというのだ。
お母さんから電話でA君のお父さんがウチに来るだろうと報告があった。
帰宅したA君のお父さんが激怒し長男に話しをすると家を出て行ったとの事だった。
私は青ざめお母さんに謝り倒しお父さんの到着と長男の帰りを待ったが、いつまで待っても2人共来ない。
まさかと思い、マンション前の往来に出てみたら人だかりが出来ていた。
そこにはA君のお父さんと長男がいて、長男の胸ぐらを掴んで怒りの表情で怒鳴っているお父さんと、反して薄ら笑いを浮かべる長男がいた。
お前のせいでウチの家はメチャクチャなんだよ!
お前の父親は何してるんだ!
お前は父親から殴られないとダメだ!
女しか殴れないんだろうが!
と言っているのが聞こえた。
お前の父親は何してるんだ!との問いに対し長男が「仕事」と言って、更にお父さんを逆上させていたが、長男には意味が分からないようだった。
何故、長男が笑っていられるのか私には分からなかった。
この子は誰なのか?
私の知ってるあの子とは違い過ぎた。
東京に来て変わり果てた我が子に悲しくなって、こんなとこ来るんじゃなかったと後悔した。
しかし、感傷に浸っている時間はない。
人混みをくぐり抜け長男達の前に出てきた。
あんた、お母さん?
と、A君のお父さんが言った。
父親は何してんの?
本当、俺たち迷惑してるんすよ。
見てコイツ、俺の事なんか怖がって無い。
こんな奴、父親からガツンと殴られないとダメだ。
俺が殴ってやりたいけど、俺も捕まるのはヤダからね。
お父さんが話してる横から暴れ出す長男。
お前はあっちにいけ!
関係ねーだろ!
殴ってやる!
長男を抑えるお父さん。
ひとまず向こうに行ってと言われ、少し離れたところから見守った。
何もできない自分に腹が立って、泣けてきた。
長男が帰され、その後お父さんが私のところに来た。
奥さんが心配だからひとまず帰るが、後から電話をすると言われ、頭を下げひたすら謝った。
その夜、A君のお父さんから電話がきた。